デスクワークの呪縛から逃れたい…愛犬との時間が私を救ってくれたのに
30代後半のwebライター、佐倉恵です。今でこそ自分のペースで働いていますが、数年前まで私も、毎日同じデスクに縛られ、心身ともに疲弊していました。特に辛かったのは、朝、まだ寝ている愛犬のトイプードル「ココ」に「ごめんね」と心の中で呟きながら家を出る瞬間です。
「今日も一日、寂しい思いをさせてしまう…」
満員電車に揺られながら、ふと窓に映る自分の顔は、生気のないゾンビのようでした。会社に着けば、山積みの書類と終わりの見えない会議。パソコンの画面とにらめっこする毎日で、心はどんどん枯れていくようでした。唯一の癒しは、家に帰ってココが尻尾を振って迎えてくれる瞬間。あの温かい体温を感じるたびに、「この子ともっと一緒にいたい」という思いが募っていきました。
「このままじゃ、本当に心が壊れてしまう…」
ある日、鏡に映った自分の顔を見て、私はゾッとしました。目元には深いクマ、肌は荒れ放題。こんな私を、ココはどんな気持ちで見ているんだろう?愛するココのためにも、この状況を変えなければ、そう強く思ったのです。
「好き」だけでは乗り越えられない?ドッグカフェ経営の友人「美咲」が教えてくれた現実
私はすぐに「犬に関わる仕事」を調べ始めました。ドッグカフェ、ペットショップ、トリマー、ドッグトレーナー…。どれも「犬と毎日一緒にいられる夢のような仕事」に見えました。特に、おしゃれなドッグカフェで働く自分を想像すると、心が躍りました。
「これだ!私の本当にやりたいことは!」
しかし、同時に拭いきれない不安も押し寄せます。
「本当に『好き』という気持ちだけで、この先の生活が成り立つんだろうか?」
「もし失敗したら、家族に何て言えばいいんだろう…」
そんな時、学生時代からの親友で、今は念願のドッグカフェを経営している美咲に連絡を取ることにしました。久しぶりに会った美咲は、カフェの制服姿で生き生きとしていました。私は今の苦しい状況と、犬関係の仕事への憧れ、そして拭えない不安を正直に打ち明けました。
美咲は私の話をじっと聞いてくれ、そして、優しくも厳しい現実を教えてくれたのです。
「ねえ、犬が好きっていう気持ちは本当に大切。でもね、それを仕事にするってことは、想像以上に大変なこともたくさんあるんだよ」
彼女が語ってくれたのは、ドッグカフェ経営の華やかなイメージの裏側にある、泥臭い現実でした。
華やかなイメージの裏側:犬のプロが語る「好き」を仕事にするということ
美咲は、ドッグカフェ経営者としてのリアルな日常を包み隠さず話してくれました。
「まず、体力勝負。朝早くから仕込みをして、閉店後も掃除や事務作業。犬のお世話だけじゃなくて、お客様対応、在庫管理、衛生管理…全部一人でこなす日も多いんだ」
美咲はグラスを傾けながら、少し疲れたような笑顔を見せました。
「そして、給料面。開業当初は、本当にギリギリの生活だった。一般的な会社員時代の年収と比べると、半分以下になることも覚悟しないと。犬が好きだからこそ、無理をしてしまう人も少なくないの」
彼女の話は、私の甘い考えを打ち砕くのに十分でした。ドッグカフェやペットショップの仕事は、確かに犬と触れ合えるけれど、それはあくまで「仕事」の一部に過ぎないのです。
- 体力的な負担: 立ち仕事、重いものの運搬、清掃など、想像以上に重労働。
- 精神的な負担: 命を預かる責任、お客様とのトラブル、クレーム対応。
- 給与水準: 一般的に会社員よりも低い傾向があり、生活を維持するのが難しい場合も。特に開業当初や未経験では厳しい現実。
- 時間的拘束: 早朝から深夜まで、休日も不規則になりがち。愛犬との時間も、仕事とプライベートの区別が曖昧になることも。
美咲は続けます。「それにね。好きだからこそ、仕事として割り切るのが難しくなることもある。例えば、体調の悪い子や、しつけが大変な子もいる。そういう時もプロとして冷静に対応しなきゃいけない。プライベートで愛犬と接するのとは、全く違う責任感が伴うんだよ」
私は、美咲の話を聞きながら、自分がどれだけ現実を見ていなかったかを痛感しました。ただ「犬が好き」という熱い気持ちだけでは、到底乗り越えられない壁がいくつもある。そして、もし無理をして「好き」な気持ちまで失ってしまったら、それこそ本末転倒だと。
後悔しないための賢い選択:愛犬と「幸せ」に暮らすための3つのステップ
美咲との会話を経て、私は「犬と関わる仕事」に対する認識を大きく改めました。大切なのは、感情だけで突っ走るのではなく、現実をしっかり見据え、自分に合った「愛犬との幸せな共生」の形を見つけることだと気づいたのです。
もしあなたが私と同じように「犬が好きすぎて仕事辞めたい」と悩んでいるなら、後悔しないために、以下のステップを試してみてください。
ステップ1:現状の仕事で「愛犬との時間」を最大化する工夫をする
いきなり仕事を辞めるのではなく、まずは今の職場でできることを探しましょう。
- フレックスタイムや時短勤務の活用: 会社制度を確認し、利用できるものがないか相談してみる。
- 有給休暇の積極的な取得: 愛犬との旅行や、平日の特別な時間を設ける。
- 職場の理解を求める: 可能であれば、ペットを飼っている同僚や上司に相談し、共感を得る。
- リモートワークの可能性を探る: 職種によっては、在宅勤務で愛犬との時間を増やすことも可能です。
私も、この時期に上司に相談し、週に一度のリモートワークを試験的に導入してもらえることになりました。たった一日でも、ココと一緒にいられる時間が増えたことで、心の負担がずいぶん軽くなったのを覚えています。
ステップ2:リスクを抑えて「犬関連の仕事」を体験してみる
本当にその仕事が自分に合っているのか、リスクを最小限に抑えながら試すことが重要です。
- 副業から始める: 土日だけドッグカフェやペットショップでアルバイトをしてみる。
- ボランティアに参加する: 保護犬施設などで、犬のお世話を体験してみる。
- 短期の専門スクールに通ってみる: トリミングやドッグトレーニングの基礎を学ぶことで、適性を見極める。
- 美咲のような専門家と話す機会を持つ: 業界のリアルな情報を聞くことで、イメージと現実のギャップを埋める。
私も、週末に近所のペットサロンで数ヶ月間、アルバイトとして働かせてもらいました。そこで、トリマーさんの大変さや、犬の扱い方の難しさ、お客様とのコミュニケーションの奥深さを肌で感じることができました。これは、安易な転職に踏み切る前に、本当に貴重な経験となりました。
ステップ3:経済的な安定と「好き」のバランスを考える
「好き」を仕事にするには、経済的な基盤が不可欠です。
- 収入シミュレーション: 転職した場合の具体的な年収・月収を計算し、生活費とのバランスを確認する。
- 貯蓄計画の立案: 転職後の収入減に備え、十分な貯蓄を確保する。
- キャリアプランの見直し: 犬関連の仕事で、長期的にどのようなキャリアを築きたいのか、具体的に考える。
- 複数の選択肢を検討する: 例えば、今の仕事は続けつつ、週末だけ犬関連のボランティアや副業を行う、あるいは、独立してペットシッターなど、自分のペースで働ける選択肢も視野に入れる。
美咲も言っていました。「好きっていう気持ちを大切にしつつ、自分も幸せに暮らせるバランスを見つけるのが一番大切だよ」と。私はこの言葉を胸に、一度立ち止まって、本当に「私とココが幸せになる道」をじっくりと考えることができました。
まとめ:「好き」は最高の原動力、でも「賢さ」が未来を拓く
「犬が好きすぎて仕事辞めたい」というあなたの気持ち、痛いほどよく分かります。私も同じ道を歩み、悩みました。しかし、大切なのは、その「好き」という純粋な気持ちを、現実的な視点と賢い行動で支えることです。
感情だけで突っ走るのではなく、情報収集と体験を通して、本当に自分と愛犬にとってベストな選択を見つけてください。焦る必要はありません。一歩一歩、着実に。
あなたの「好き」が、あなたと愛犬の未来をより豊かにする原動力となることを心から願っています。
この記事を書いた人
佐倉 恵 | 38歳 | ペットとの共生、キャリアチェンジ、ライフワークバランスを得意とするwebライター
