「うちの子はこんな高級フードしか食べないの」「このブランドの服、限定品でしょ?」
ドッグランやカフェで、そんな会話が飛び交うたび、私の心は鉛のように重くなりました。40代の愛犬家として、柴犬のハルと穏やかな毎日を送るのが理想だったのに、いつしか犬友の集まりは「うちの子自慢」のマウント合戦の場に。純粋に犬の話がしたいだけなのに、どうしてこんなに疲れてしまうんだろう…と、孤独感に苛まれる日々でした。ハルと散歩に出かける足取りまで重くなり、「このままではハルにも申し訳ない」と、絶望的な気持ちに沈んでいったのです。
なぜ、犬への純粋な愛が「見せびらかし」に変わるのか?
私が感じていた疲弊感は、多くの愛犬家が密かに抱える「犬友マウント」問題でした。なぜ、愛する犬を通じた交流が、こんなにも心をすり減らす競争になってしまうのでしょうか?
ある日、私は長年の友人であるドッグトレーナーの由美(仮名)さんに、その悩みを打ち明けました。「ねえ、由美。最近、犬友の集まりが本当に苦痛で。みんな、まるで自分の価値を犬で測っているみたいで…」
由美さんは、私の話を静かに聞いてくれました。そして、「人間ってね、自分の価値を認められたい生き物なの。特に、何かを一生懸命やっている人ほど、その努力や成果を認めてほしいと思う。それが犬を介することで、時に『うちの子が一番』という形になって表れることがあるんだよ」と教えてくれました。由美さんの言葉は、私の心の奥底に響きました。「そうか、みんなも必死なんだ…」と、少しだけ心が軽くなった気がしました。
マウント合戦の泥沼から抜け出せた私の転機
由美さんの言葉を聞いて、私は自分の心の持ちようを変えることを決意しました。以前の私は、マウント発言を聞くたびに「うちのハルは…」と比較し、劣等感を感じていました。しかし、由美さんは「大切なのは、ハルとあなたがどう幸せか、ということ。他人の評価は関係ないんだよ」と諭してくれました。
それから私は、犬友の集まりでの発言を深読みするのをやめました。誰かが「うちの子は月に10万円のトリミングに」と言っても、「へえ、すごいね!」とサラリと流し、ハルの頭を撫でる。心の中では「ハルは私の膝の上でゴロゴロしてるのが一番幸せだもんね」と語りかけるのです。すると不思議なことに、以前ほどイライラしなくなりました。むしろ、マウントを取る相手の背景に、由美さんが言っていたような「承認欲求」が見えるようになり、少しだけ冷静になれたのです。
そして、本当にハルとの時間を大切にすることに集中しました。由美さんの紹介で、新しいドッグコミュニティにも参加してみました。そこには、犬種や飼育方法に関わらず、ただ純粋に「犬が大好き」という共通の想いを持つ人たちが集まっていました。そこでは、ハルの些細な仕草や、一緒に散歩したときの美しい景色を共有するだけで、心が満たされるのを感じました。
あなたと愛犬が輝くための3つの行動
犬友のマウントに疲れてしまったあなたへ。私が由美さんから学び、実践したことを3つのステップでご紹介します。
1. 「他人軸」から「自分軸」へシフトする: 誰かの評価のために愛犬を飼っているわけではないはずです。愛犬との純粋な絆、そこから生まれる喜びを最優先に考えましょう。由美さんも「あなたの愛犬は、誰かの評価のために生きているわけじゃない」と力強く言ってくれました。
2. 適切な距離感を保つ勇気を持つ: マウント発言が頻繁な人とは、無理に付き合う必要はありません。時には、物理的な距離を置くことも大切です。SNSでの情報も、自分にとって心地よいものだけを選びましょう。
3. 新たな「心の繋がり」を探す: 価値観の合う犬友は必ずいます。地域のイベントや新しいドッグコミュニティに積極的に参加し、本当の意味で共感し合える仲間を見つけましょう。私のように、心が解放される出会いがきっとあります。
愛犬との時間は、何よりも尊い宝物です。他人の評価やマウントの鎖から、あなたと愛犬の笑顔を解放してください。そして、純粋な愛情で満たされた、穏やかな日々を取り戻しましょう。もし、一人で抱え込まずに、信頼できるドッグトレーナーや専門家に相談することも、大切な一歩になります。
この記事を書いた人
佐藤 陽子 | 40代 | 愛犬と心豊かな暮らしを提案するwebライター
柴犬ハルと暮らす愛犬家。かつて犬友のマウント合戦に疲弊し、愛犬との純粋な時間が楽しめなくなった経験を持つ。ドッグトレーナーの友人との出会いをきっかけに、心の持ちようと人間関係を見直し、現在は愛犬との穏やかな日々を満喫している。同じ悩みを抱える愛犬家が、心から笑顔になれるような情報発信を心がけている。
